初めて人事・採用担当になった方の中には、「面接では何を見ればいいの?」「本当に自社に合う人材を見極められるだろうか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
私自身、人事として採用に携わる中で、「人を選ぶ」という仕事の難しさを感じる場面が何度もありました。
そんな中で出会ったのが、『人を選ぶ技術』という一冊です。
採用は、単に人を選ぶ仕事ではありません。会社の未来をつくる仲間を迎える、とても重要な仕事です。
だからこそ、「人を見る力」や「採用の考え方」を学ぶことは、人事・採用担当者にとって大きな財産になります。
この記事では、『人を選ぶ技術』の内容をわかりやすく要約しながら、私自身が読んで特に印象に残ったポイントや、実際の人事・採用業務にどう活かせると感じたのかを、現役人事の視点からレビューします。
初めて採用を担当する方はもちろん、経験はあるものの「今のやり方で本当にいいのだろうか」と立ち止まって考えたい方にもおすすめの一冊です。ぜひ最後までご覧ください。
- 初めて人事・採用担当になった方
- 採用の進め方や面接に自信がない方
- 優秀な人材を見極めるヒントを知りたい方
- 人を見る力や採用の考え方を学びたい方
『人を選ぶ技術』とは?基本情報を紹介
『人を選ぶ技術』は、「人を見る目」を感覚や経験だけに頼らず、体系的に学ぶための一冊です。
著者は、起業家・経営者・コンサルタントとしての経験を持ち、世界最高峰のヘッドハンティングファームで、5,000人を超えるハイクラス人材を見極めてきた人物。
本書では、経験から培われた「人を選ぶ技術」や、人間を「構造」で捉えるための考え方が、さまざまな事例を交えながら紹介されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書籍名 | 経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術 |
| 著者 | 小野 壮彦 |
| 出版社 | フォレスト出版 |
| 出版日 | 2022年11月21日 |
| 価格 | 1,980円 |
| ページ数 | 296ページ |
『人を選ぶ技術』が必要な理由
『人を選ぶ技術』では、「人を見る目」は生まれ持ったセンスではなく、人を科学的に捉えることで身につけられる技術だと考えられています。
採用では、「この人は優秀そう」「なんとなく感じがいい」といった印象だけで判断してしまいがちです。
しかし、本書では人を見る際に、まず次の4つのタイプに分けて考えます。
「人を見る目」の4タイプ
人を見るときのポイントは、大きく次の2つです。
- 人としての優秀さ:仕事ができる人なのか、できない人なのか
- 人としての害の有無:周囲にとっていい人なのか、いやな人なのか
この2つの軸を組み合わせることで、人を4つのタイプに分けて考えることができます。
| 無害 | 有害 | |
|---|---|---|
| 優秀 | ①優秀で無害 | ③優秀で有害 |
| 平凡 | ②平凡で無害 | ④平凡で有害 |
この中で特に見極めたいのが、「①優秀で無害」な人。
仕事ができるだけではなく、周囲に悪影響を与えない。このような人材は、組織にとって非常に価値のある存在です。
一方で、採用面接などの限られた時間の中で、その人が本当に「優秀で無害」なのかを見極めるのは簡単ではありません。
だからこそ本書では、単なる勘や経験に頼るのではなく、「人を見る目」を科学的に捉えてトレーニングすることの重要性を説いています。
人の評価を歪める「認知バイアス」とは?
「①優秀で無害」な人材を見極めたいと思っていても、実際には見逃しが発生してしまいます。
その原因の一つが、私たちが無意識のうちに陥ってしまう「認知バイアス」です。
認知バイアスとは、物事を判断するときに、無意識の思い込みや先入観によって評価が偏ってしまうことです。
本書では、こうした人の評価を歪めてしまう認知バイアスについて、具体的な例を挙げながら解説しています。
学歴差別とハロー効果
学歴によって相手への評価が変わってしまうことがあります。
「有名大学を卒業しているから優秀だろう」と考え、高学歴という一つの印象に引っ張られて、その人全体を良く評価してしまうケースです。
これは「ハロー効果」と呼ばれる認知バイアスの一つです。
本来であれば、学歴だけでなく、その人の能力や経験を総合的に見る必要があります。しかし、一つの目立った特徴に引っ張られることで、他の部分まで実際以上に良く評価してしまうことがあります。
確証バイアス
確証バイアスとは、自分の意見や仮説を支持する情報を、無意識のうちに優先して探してしまう傾向のことです。
採用面接でも、最初に「この人はあまり良くないかもしれない」と感じてしまうと、その後は無意識のうちに、その印象を裏付ける情報ばかりを集めてしまうことがあります。
反対に、「この人は優秀そう」と感じた場合には、その印象を支持する情報に目が向きやすくなります。
つまり、最初の印象や仮説が、その後の評価そのものを歪めてしまう可能性があるのです。
人を見る目を養う「4つの階層」とは?
本書では、人を見極めるための考え方として、「4つの階層」が紹介されています。
人を「地上1階」から「地下3階」までの4つの階層に分け、それぞれの階層を見ることで、相手のことをより深く理解できるという考え方です。
地上に近いほど相手から見えやすく、分かりやすい一方で、変わりやすいという特徴があります。
反対に、地下に潜れば潜るほど見えにくく、分かりにくくなりますが、その人の根本的な部分に近く、変わりにくいとされています。
| 階層 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 地上1階 | 経験・知識・スキル | 見えやすく、分かりやすい |
| 地下1階 | コンピテンシー | 行動特性から将来の行動を予測する |
| 地下2階 | ポテンシャル | 伸びしろやエネルギーの源泉を見る |
| 地下3階 | ソース・オブ・エナジー | その人を突き動かす精神力を見る |
それぞれの階層では何を見るのか、順番に紹介していきます。
地上1階「経験・知識・スキル」
一番分かりやすいのが、地上1階の「経験・知識・スキル」です。
これまでどのような仕事をしてきたのか、どんな知識やスキルを持っているのかといった情報で、履歴書や職務経歴書、面接などから比較的簡単に確認できます。
一方で、誰でも確認しやすい部分でもあるため、相手をより深く見極めるには地下1階以降を見ることが重要になります。
地下1階「コンピテンシー」
地下1階にあるのが「コンピテンシー」です。
「好業績者の行動特性」のこと。
その人がどのような状況で、どのような行動を取るのかという、固有の行動パターンを指します。
経験・知識・スキルを見るだけでは「今、何ができるのか」は分かっても、将来どのような行動を取る人なのかまでは分かりません。
一方で、コンピテンシーを見抜くことができれば、相手の「将来の行動」を予測することにつながります。
- 成果志向
- 戦略志向
- 変革志向
コンピテンシーを見抜く方法として、本書では「エピソード・ベースのインタビュー」が紹介されています。
ポイントは、相手の「意見」ではなく、実際に取った行動=ファクトにフォーカスすることです。
地下2階「ポテンシャル」
地下2階にあるのが「ポテンシャル」です。
ポテンシャルを見るときは、その人にどれだけの伸びしろがあるのか、そしてどんなことにエネルギーが湧くのかという観点から見極めます。
- 好奇心・・・新しい経験や知識を求める力
- 洞察力・・・情報を収集し、理解する力
- 共鳴力・・・自身の想いを伝え、人とつながろうとする力
- 胆力・・・大きな挑戦や課題に向かう力
これらを見ることで、現在の能力だけではなく、これからどこまで成長できる人なのかを考えることができます。
地下3階「ソース・オブ・エナジー」
最も深い地下3階にあるのが、「ソース・オブ・エナジー」です。
人を突き動かす精神力のこと。「使命感」や「劣等感」といった、行動の源となるもの。
経験やスキルだけではなく、「この人は何を原動力として動いているのか」まで掘り下げていくことで、その人をより深く理解することができます。
人を見極める4つの実践テクニック
「4つの階層」で人を深く見るためには、実際の面接でどのように相手と向き合えばいいのでしょうか。
本書では、人を見極めるための4つの実践テクニックが紹介されています。
1.「整える」|まずは自分の心を整える
人を見ることは、繊細さと集中力が求められる作業です。だからこそ、面接前にまずは自分自身の心を整えることが大切です。
深呼吸をしたり、面接相手のレジュメを改めて確認したりするなど、自分なりの方法で気持ちを切り替え、面接に集中できる状態をつくります。
2.「和らげる」|相手をリラックスさせる
和らげるとは、相手の緊張を和らげることです。
相手がリラックスすると自然な様子が見えやすくなります。面接の最初にアイスブレイクを取り入れるなど、いきなり本題に入らず、ちょっとした会話から始めることも有効です。
また、相手をリラックスさせるためには、面接官自身がリラックスすることも大切です。
3.「あぶり出す」|質問で相手の本質を引き出す
採用面接では、候補者のことを本当に見極めるための質問ができている会社は、実は多くありません。
その原因の一つが、質問の仕方にあります。
本書では、相手の意見を聞くだけではなく、具体的なエピソードを引き出すことを重視しています。
例えば、相手の回答に対して「それで?それで?」とさらに深掘りしていくことで、表面的な回答の奥にある事実を掘り下げていきます。
ポイントは、意見ではなく、実際に何をしたのかという「ファクト」を聞くこと。
実際の行動を聞くことで、その人の行動特性を把握し、再現性を見極めることにもつながります。
4.「ボーッと見る」|直感的な違和感を見逃さない
「ボーッと見る」というテクニックです。
人を見極めるためには、脳のコンディションを整えておくことも重要です。
そのために本書では、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」が紹介されています。
何も考えていない状態で、ぼんやりと安静にしているときに働く脳の神経活動のこと。
人の深い部分にある「ポテンシャル」や「ソース・オブ・エナジー」を見極めるときには、このようなリラックスした状態が重要だとされています。
面接でハマりやすい3つの落とし穴
面接では、候補者のことを知ろうとするあまり、つい「志望動機」や「性格」、「自社とのカルチャーフィット」などを評価してしまいがちです。
しかし本書では、こうした項目には人を見極めるうえでの落とし穴があるとしています。
ここでは、面接でハマりやすい3つのポイントを紹介します。
1.「モチベーション」|志望動機や熱量だけで判断しない
「この会社に入りたい」という気持ちの強さと、入社後に成果を出せるかどうかは、必ずしも同じではありません。
そのため、面接ではモチベーションの高さだけを見るのではなく、これまでの行動や能力、ポテンシャルに目を向けることが重要です。
2.「カルチャーフィット」|変化するものを物差しにしない
「自社のカルチャーに合う人かどうか」という視点も、採用ではよく使われます。
しかし、本書では、カルチャーフィットだけを基準に人を判断することには注意が必要だとしています。
カルチャーは、組織にいる人や事業、環境が変われば変化していくものです。そのため、「今のカルチャーに合うかどうか」だけで人を判断するのは、必ずしも適切とはいえません。
本書では、カルチャーそのものよりも、「評価システム」や「権限委譲システム」といった組織の仕組みに注目することが重要だとしています。
3.「性格」|曖昧だからこそ判断には注意が必要
「明るい人」「真面目な人」「協調性がある人」など、面接では候補者の性格を評価することもあります。
しかし、本書では、性格ほど曖昧で危険な概念はないとしています。
「明るい」「真面目」「協調性がある」といった言葉の捉え方は、人によって大きく異なるからです。
そのため、「性格が良さそう」「自分と合いそう」といった曖昧な印象だけで判断するのではなく、具体的な行動や事実に目を向けることが大切です。
人を見る力を鍛えるには「自分」を知る
人を見る力を鍛えるためには、相手を観察するだけでは十分ではありません。
本書では、人を見るための格好の題材は「自分自身」だとしています。
自分がどのように考え、どのような場面で感情が動き、どんな行動を取るのか。まずは自分自身を観察し、理解することが、相手を深く理解する力にもつながります。
「書く」ことで自分の見立てを検証する
人を見極める力を鍛えるために、面接後に「書く」ことをすすめています。
面接が終わったら、できるだけ時間を置かずに、候補者について感じたことや見立てたことをレポートとして記録します。
そして、時間を置いてから見直し、「自分の見抜きや見立ては正しかったのか」を検証します。
こうした振り返りを繰り返すことで、自分が人を見るときの癖や思い込みにも気づきやすくなり、人を見極める力を磨くことができます。
自分の「無自覚な癖」を知る
自分の心こそ、人の心を知るための最高のサンプルです。
私たちには、自分でも気づかないうちに行動や思考に影響を与えている「無自覚な癖」があります。
例えば、物事を判断するときの考え方や、人との関わり方、苦手なことに直面したときの反応などです。
こうした自分の行動や思考のパターンを理解しておくことで、相手についても表面的な言動だけではなく、その奥にある思考や行動のパターンを想像しやすくなると本書では考えられています。
自分のバイアスを知る
人を見るときには、相手だけでなく、「自分がどのようなバイアスを持っているのか」を知ることも重要です。
「このタイプの人は活躍しそう」「こういう人は自社には合わない」といった経験から生まれた判断基準も、知らないうちに思い込みになっている可能性があります。
だからこそ、「今の自分の判断にバイアスはかかっていないか?」と立ち止まって考えることが大切です。
優秀で有害な人を特定する
「人を見る目の4タイプ」の中で、注意しなければならないのが「優秀で有害」な人。
本書では、表向きは感じがよくても、無自覚な悪意を持っている人を「EVIL」と呼んでいます。
EVILは、個人だけでなく、組織にも大きな影響を与える可能性があります。
「優秀で有害」な人が危険な理由
特に注意が必要なのが、「優秀で有害」なEVILです。
なぜなら、仕事ができたり、コミュニケーション能力が高かったり、会社に大きな利益をもたらしたりするため、有害な部分が見えにくいからです。
短期的には会社に利益をもたらしてくれる存在であっても、中長期的にはマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
- 周囲の社員が疲弊して退職してしまう
- パワハラなどの問題につながる
- コンプライアンス上の問題を起こす
- 結果として会社の信用を失う
「仕事ができる=組織にとって良い人材」とは限らないということです。
EVILには2つのタイプがある
本書では、EVILには大きく2つのタイプがあるとしています。
威圧的な態度をとり、相手をコントロールしようとするタイプ。パワハラ上司などが典型的な例です。
自意識が過剰で、自分の欲求を満たすために周囲を巻き込んでしまうタイプです。
EVILの元となっているのは「サイコパス気質」。
面接時にサイコパス度を見抜く方法の一つとして、「まばたき」についても紹介されています。本書によると、サイコパス度が高い人は、まばたきの回数が極端に少ないとされています。
面接では、話している内容だけでなく、こうした非言語的な反応にも目を向けるというのが、本書で紹介されている人の見極め方の一つです。
本書では、プレッシャーによって突然EVILの側面が現れる「突発性EVIL」や、面接での具体的な見極め方についても詳しく紹介されています。人を見極める方法をもっと知りたい方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。
『人を選ぶ技術』を読んだ感想|現役人事として考えさせられたこと
『人を選ぶ技術』を読んで、まず感じたのは、自分自身も「人を見ること」を感覚に頼っていた部分があったということです。
人事として面接を経験する中で、少しずつ経験を重ねていくと、「こういう人は活躍しそう」「こういうタイプは自社には合わなそう」といった、自分なりのパターンができてきます。
それ自体は経験から得られる大切な感覚だと思います。
一方で、その経験が知らないうちに、「きっとこうだろう」というバイアスにつながっている可能性もあると気づかされました。
また、面接では限られた時間の中で候補者を見極める必要があるため、どうしても「なんとなく感じがいい」「この人は合いそう」といった自分の感覚を頼りに、面接を進めてしまうことがあります。
しかし、採用は、単に一人の社員を選ぶ仕事ではありません。
これから企業をつくっていく人と向き合う仕事だからこそ、なんとなくの感覚だけで判断するのではなく、相手をきちんと見る力を身につけなければいけないと感じました。
『人を選ぶ技術』は、人を見るための具体的な方法を学べるだけでなく、「自分は本当に人を見られているのか?」と、自分自身の面接を振り返るきっかけを与えてくれました。
『人を選ぶ技術』は、人事になったら最初に読んでほしい一冊です。
これから人事・採用を担当する方はもちろん、すでに経験を積んでいる方にも、「人を見る」ということを改めて考えるきっかけになると思います。
私自身も、この本を読んで「まだまだ人を見る力を磨いていきたい」と感じました。
まとめ
『人を選ぶ技術』は、人を見る目を感覚や経験だけに頼るのではなく、科学的に捉えてトレーニングできると教えてくれる一冊です。
といった、人を見るためのさまざまな考え方が紹介されています。
人事になったばかりの方はもちろん、すでに採用経験がある方にも、ぜひ一度読んでほしい一冊です。
本記事では紹介しきれなかった具体的な事例や、人を見極めるための考え方も本書にはたくさん紹介されています。
「もっと詳しく知りたい」「実際の面接や人間関係に活かしてみたい」という方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。